住まいの値段の内訳/林芳宏

  これまでのAnTメンバーの投稿を元に少し硬い話をしたいと思います。
建築の値段を評価するには中身がどうなのかを考えた上でなければ、ただ金額だけで高い、安いは評価できません。

建築工事の値段は基本設計が終わった時に出す概算工事金額と実施設計が終わった後に出す最終的な工事金額があります。
概算工事金額は設計者がこれまでの実績や今回の特殊事情などを基にして算出するもので、実施設計を始める前に予算に合っているかを確かめる作業になります。ここで、予算オーバーになった場合は中身を見直し、建築主と相談して内容の変更を行います。それを基に実施設計を行い、詳細を決めていきます。実施設計が終わったら、入札又は特命工事で施工会社に見積もりを依頼します。

元請け会社が作成する見積書の内訳をおおまかに分けると


1.直接工事費 2.総合仮設費 3.諸経費 に分けられます。


1の直接工事費は様々な工種に分けてそれぞれの工種の専門会社が見積もりしたもので、材料費と工賃に分けて見積もりされます。

2の総合仮設費は工事中の仮設用電力費や水道代や仮設事務所費など、工事全般にかかる費用で、直接工事費の金額に一定の割合で算出された金額です。

3の諸経費は施工管理担当者の人件費や元請け会社の経費や利益を示します。


設計者は特に直接工事費の見積もりを数量や単価の部分をチェックして妥当かどうかを確認します。数量は実施設計に基づいた実数量に歩留まり分などを足して算出されますので、確認の対象となります。単価もこれまでの実績や市場単価の資料を基にして確認します。

つまり、何にどれ程の値段がかかっているのかを正確に把握します。ですから、工事中の追加工事も一体どれだけ追加なのか数量で確認できますので金額が増えないように他で下げるなどの調整もできます。


「坪いくら」や「一式いくら」だけで決まった工事費ではないので中身を正確に把握した上で建築主に説明して納得していただいた金額であることは、施工者にとっても透明な工事となっているので、最後まで皆が納得して工事を進められるということです。わかりにくい工事金額の中身を建築主に代わって正確に把握することは建築主にとってはなにより納得できることだとおもいます。


数社の施工会社へ見積もり依頼をした場合、競争になるので、安くなる傾向にありますが、金額の中身を正確に確かめて比較しないと、契約後に数量不足や、見積もり忘れがあったりしては工事金額が変わってしまいますので設計者は神経を使います。

その結果、適切な金額で工事できれば建築主にとっては安くて良い買い物になるわけです。これは中立的な立場で工事金額を査定できる設計者があってのことなので建築主には安心できる存在だと言えるでしょう。そして設計図通りに工事が行われているか、見積の内容通りになっているかも設計者がチェックしますのでさらに安心です。


建築工事の金額は正確に中身を把握することで初めて意味をもつといえるでしょう。

投稿者  :林 芳宏
投稿日  :2011.09.09 Friday
カテゴリー:04 リレートーク
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建築家に何を期待するか/山田哲也

AnTcafe3rd「0.1億円のすまい」展を終えて 

「君に設計をお願いすると高いんでしょ?」

よく耳にする言葉です。

「君ならどんな提案ができる?」

そう聞いてくださる方がいらっしゃらないのは、まだまだ僕たちの仕事が浸透していないということでしょうか。

水野敦さんが先に説明していらっしゃるように、総予算から土地代や設計料等を差し引いた分が建築本体にかけられる金額になるわけですが、私たちが設計するすまいは大量生産されている住宅と同規模のものを同じ金額でというのはなかなか難しいので、私の場合、主にボリューム調整や素材の選択によって予算内に納めています。


具体的にボリューム調整とは最小限の要素で施主の希望を満足できるように、空間のつながり、ボリュームのリズム、開口部のとり方、外部とのつながり等を検討します。単に「間取り」の検討ではなく高さや様々なつながりを含めた何次元もの検討によってできあがる空間は、例え面積的には小さくなっても、数値に表せない心地よさや贅沢感がそこにはあると思います。一度我々が設計した住宅をご覧になってください。広さが必ずしも住宅の評価指標ではないという事がご理解いただけると思います。


次に素材の選択という点ですが、僕たちが設計する住宅はカタログで販売されるような商品としての住宅でもありません。商品として売られている住宅であれば全てがそれなりの状態で設えてありますが、建築家との家作りではどこまで設えるかの線引きはお施主さんと相談して自由に設定できます。コストをかけるところとかけない所のメリハリも作れます。構造材でも美しいものにはあえて内装を施さない場合もありますし、別の用途の物を仕上げ材に転用してコストを下げることもあります。


これらの事が可能なのは、お施主さんが僕に「任せる」のではなく「一緒に造る」というスタンスで臨まれているからだと思います。

昔の人は身近にある材料を用いて自分たちで住まいを造っていました。発展途上国ではまだそのような方たちがいます。しかし、日本では人が増え、制度が増え、使える材料が増え、情報が増えたが故、自分がイメージするすまいを自ら具現化することができなくなってしまい、僕らのような職種ができたのだと思っています。なので、僕らの役割は先に述べたように何次元もの検討を踏まえた提案によって、みなさんのすまい造りを手助けすることなのです。

 

建築家は皆様のすまいに対する想いを一緒に考えてくれる身近な存在として認知していただけると幸いです。

そして提案力に期待して一度扉をたたいてみてはいかがですか?

投稿者  :山田 哲也
投稿日  :2011.08.22 Monday
カテゴリー:04 リレートーク
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「0.1億円台の住まい展」をふりかえって/熊谷猛

昔バックパック一つで海外を貧乏旅行してた時期があります。 
持ち物は最低限の着替えと洗面道具、あとは財布とパスポートだけ。 
無くしたりどこかに置き忘れる心配をするくらいならと、カメラさえ持って行かない時もあったんですが、今思えばさすがにこれはやりすぎでした(笑)。 
それらを収めるバックはせいぜい20L程度の軽登山用で、旅先で出会う同じ旅行者、特に何を運んでんの?って思うくらい巨大なバックを背負った白人のバックパッカーからは、「Amazing!」なんて驚かたもんです。
そんな具合でぶらぶらしてたんですが、極力物を持たないこんなスタイルは、とにかく身軽であり、本当に自由な気持ちでどこまでも進んで行けるように感じていました。

前置きが長くなりましたが、現在は建築の仕事にたずさわり、この設計の際にもあの時感じた自由な気持を大切にしたいなって常に思っています。
本当に必要なものを考え、シンプルに建物を構成する。 
それは空間だけでなく、構造や設備や環境についても同様です。 
さらに言えば、(自分で自分の首を絞めちゃうような考え方なんですが)建物にあまりお金をかけないほうが良いなんて思ってます。
ういたお金で旅行にでも行ってもらいたいなと(笑)。

今回、「0.1億円台の住まい」というイベントに参加させていただいたのですが、僕自身、ローコストという言葉に否定的な意味合いは全然もっていません。 
出展した住宅も、豊かな景観を楽しむことを第一に、あとはいたってシンプルに構成されています。
その設計の結果として、あまりお金がかからなかったな、なんてことになっていたら理想的ですね。

投稿者  :熊谷 猛
投稿日  :2011.08.09 Tuesday
カテゴリー:04 リレートーク
コメント :comments(0)



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